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35日目!後編 宝石屋との戦い -アグラ- [インド旅行記-アグラ]

hell time.JPG

-前回のあらすじ-

病魔に蝕まれた出来杉君を見送り、のび太はつぶやく。
これからが本当の地獄だ・・・と。


ヘラヘラと嫌な笑みを浮かべ、リキシャマンはオレに近づいてくる。
ただでヤラれると思うなよ・・・こぞう・・・

さぁ、戦いを始めようじゃないか!

「じゃあ、まずは土産物屋に行くでやんすよ!」

な、なに!?宝石屋だけではなかったのか!?
くっ!勝手にオプショナルツアーを追加しやがって・・・

しかし、オレに断る権利など無い。
仕方ない・・・行こうじゃないか・・・

kobuusi.jpg
《カジュラホで陶芸職人に教わって作ったコブウシ。100ルピーです。》


予想以上に時間をかけて、オレ達は土産物屋についた。
幾人もの人を騙して財をなしたのであろう・・・それは立派な店であった。

リキシャマンは外から店主にオレを指差している。
「カモ連れきてやした!」とでも伝えているのであろう。

オレは店に入ると店主に一礼し、
買う気もしないような高価な土産物を一瞥し、
サッと店内を一回りするとすぐさま、外に出た。

うむ!大勝利である!

良い店であったな。次へ行くぞ。とリキシャマンに堂々と伝えると
彼は悲しそうな顔で「これじゃあ、マージンがもらえないでやんすよ・・・」と
思わず本音を漏らし、うなだれてしまった。

いくらなんでも早すぎたらしい。

わりぃわりぃと、超反省して謝り
じゃあ何分ぐらいいたら良かったん?と聞くと

「最低でも15分はいて欲しい」そうだ。

おっけー、次からは気をつけるよ。


「じゃあ絨毯屋に行くでやんす!次は頼んますよ!」。

おいおい!次こそ宝石屋じゃねえのかよ!

どうも土産物屋でマージンがもらえない事で
また勝手にオプショナルツアーが追加されたらしい。

ちっ!仕方ない。次は15分間はいてやるか・・・

オールドキリム ・ シルヴァン カリヨラ 228×168cm16の狼の足跡 fs04gm












絨毯屋はすぐ近くだった。

ここはさっきの土産物屋以上に店構えがきちんとしている。
幾人の人を騙せば・・・以下略

さぁて、15分間がんばろーと無気力試合を戦うスポーツ選手のように、
ふぬけた気合いをいれ、絨毯屋に入る。

店内には、欲の強そうなでっぷり太った店主がいる。

そして彼は用意していたであろうチャイをサッと出し、
驚いたことに日本語でセールストークをしてきた。

「あなたとてもハンサムねー。」
「日本人、リッチだから部屋大きいね。」
「だからジュータン、とても部屋に似合う。」
「日本人ならみんなこのジュータン買う。」
「とてもチープね。」
「これ、とてもいいジュータン買った方がいい!」

上手な日本語とは言えないが、
ちゃっかり容姿を褒めながらのセールスはなかなか見事だ。

ふうん、でナンボなの?
100,000ルピーね!」

???????

この旅で初めて耳にする数字にオレの頭の中の計算機は
計算不能っすとEのマークを出し停止する。

店主が計算機を取り出し、
ようやくそれが15万円ぐらいのものだとわかった。


・・・アホですか?こいつは?
こんな貧乏旅行者になにを売りつけようとしてるんだ?

オレは正直に
ムリだよ、お金ないもん。と伝えたが


「これは手織り!グッドクオリティね。」
「カードを使えば買えるね!!」

おっさんの営業トークはドンドン、ヒートアップしてくる。

対してオレは15分まだかな~と時計を見ながらふーん、へえ?を繰り返していた。

不毛だ・・・不毛すぎるバトルだ。

そんなペンペン草すら生えないような空気を打ち破るがごとく
突然、店内に日本人のおばさん集団が入ってきた。

すると、オレに対する熱い営業はなんだったのか、
店主はオレを置き去りに、彼女らのもとに駆け寄り
先ほどの営業トークを超える熱意でおばちゃんたちを口説きに走った。

「マダームお美しい!!!!この美しさにはこのジュータンしかないね!」

やぁだー、もう。

すでに俺の存在は目にもはいっていないらしい。
15分は経っていないが、これは仕方が無い。

店を出よう・・・

店を出るが、おばちゃんたちへのトークに夢中で全く引き止められないオレ。
なんだろう・・・少し寂しい。

リキシャマンはすごすごと帰ってくるオレを見て
「だーかーら!はや過ぎるって言ったでしょ!!」と食って掛かってくる。

いやいや!カクカクシカジカでだな、と全力でオレ悪くねぇし!という事を話すと
肩を落とし「じゃあ、宝石屋に行くでやんすよ・・・」とリキシャを発車させた。


宝石屋は予想に反して薄暗い寂れた店だった。
こんな暗い中で宝石を見てもキレイとかわからんのでは・・・
と思わず同情してしまう。

すると奥からもっさりとしたヒゲの店長がやってきた。

このヒゲおやじは、何を思ったのか
いきなりオレに「金を買わないか?」と持ちかけてきた。

こんな浮かれたインド服を着てる奴が買えるワケ無いだろ!!!と思うが
「まぁ見てくれよ。」と金のネックレスを取り出す。

うわぁ、キレイだなー。さわっても?
「もちろんだ。」

じゃあ、よっこいしょっと・・・
おお!かっる!!軽すぎやろおい!!!

ご存知かと思うが、金はプラチナに次ぐ重物質である。
18Kの場合で水との比重値は約15ぐらいだったように記憶している。
つまり500mlのペットボトルの中に金を流し込んだ場合の
重量は約7.5kgということになる。

・・・この国の金とはアルミのことですかね?

こんなのに騙される奴がいるわけがないだろ!!


ヒゲおやじに眼福でござったと突き返す。

ヒゲおやじはオレの表情から全てを察したのか、ネックレスを後ろにしまいこんだ。

うん、そういう潔さは嫌いじゃない。


「ところで、オマエには母親や姉妹はいないのか?」

(ここで『いる』というと、プレゼントに宝石を買っていけとか言われるもんな。)

母親は生まれた時からいない。
オレには家族なんていないんだ。と真剣な表情で嘘をつくオレ。

そうか・・・と寂しそうな顔になる店長。

「恋人とかは・・・いないのか・・・?」

(いるとか言うと・・・以下略)

残念だけど、こんな顔だからいない。
これからも出来ないだろうね。

「そうか・・・がんばれよ・・・」

自分で言っておいてなんだが、まさか同情されるとは思わなかったよ。
というか、そこはフォローしろよ!!!ひどいじゃないか!


ガチャガチャと宝石を片付け始める店主。
さぁて終わった終わったと、その様子を見ていると

宝石の中に黒い小さな宝石を見つけた。
あまり目立たないが、少しかわいい。

agra star

おっちゃん!それ見せて?

「う、うん?ああ、これか?」
「ああ、コレはアグラスターと言ってここでしか取れない宝石だ。」
「よく見な。光を当てると星が見えるだろ?」

おお、これいいね。
ちなみにナンボくらいするの?

「欲しいのか?普通なら2000ルピーからだが、200ルピーでいい。」

え?なんで・・・?

「オマエみたいな不幸なヤツからはカネは取れん。

え?いいんすか・・・?

「かまわん。持っていけ。」

あ、あざーす・・・

オレは店主の俠気に火を付けちまったのか・・・?

オレの戦いは完全勝利を通り越し、
まさかの店主をだますという後味の悪い結果に終わってしまった。


外にでると、リキシャマンから「買ってくれたのか!!」と店主以上に感謝される。

オレだって予想外だよ。

無事、宿に着き約束通りの100ルピーを手渡す。


そして部屋で一人、小さな宝石を眺めていると
ホテルマンが訪問客が着てるいることを告げた。

だれだ?とカウンターに向かうと
すこし元気になった様子の出木杉君がペコリと頭を下げてきた。

そして、体調は万全だとの事だったので
夜の街に繰り出し、
ふたり、最初で最後のディナーを心ゆくまで楽しんだのだった。




ちなみに、このインドの宝石。
今、調べたのだが、アグラスターなんて宝石ない。
たぶんこれのことなんだろうな。



どれどれ・・・?産地タイ、オーストラリア・・・?
アグラーでしか取れない・・・ねぇ・・・?

うん!心の凝りがとれた気がするよ。
ありがとう、だましてくれて。


いやぁ、いい店だった!




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yas-pi

こぶ牛、かわいい(^o^)

のび太さんのブログ、最高に面白い!
by yas-pi (2014-05-12 21:06) 

のび太

yas-pi様

こんな過疎地のブログを訪ねて下さり、ありがとうございます。

コブ牛のコビーですが大掃除の日に床にダイブをし
その短い一生を終えてしまいました。
ただyas-pi様にかわいいとおっしゃって頂けたことで
彼もようやく浮かばれたことでしょう。

改めてありがとうございます(〃ノωノ)

by のび太 (2014-05-13 17:39) 

Lee

自分もコブ牛に一票(*^^*)
by Lee (2014-07-05 19:50) 

のび太

Lee様
こぶ牛人気にビックリですw
カジュラホの陶芸爺さんには大量生産するよう言っておきますw
by のび太 (2014-07-07 15:29) 

お名前(必須)

アグラスター無いんですね!
しつこい押し売りに負けず、買わないで良かった。
小さなリングが2万円って言われました。
200なら買ってあげたのに。
コブ牛の方が欲しいです。
by お名前(必須) (2019-02-08 18:39) 

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