はじめは時が解決してくれる。そう信じていた。
しかし、その波は時間を追うごとに激しさを増していく。
そう・・・時だって病んでることがあるのだ。
はああああぁぁぁ・・・やばい・・・これは持た・・・ない!?
-心の会話-
ア、アナル隊長よ・・・もっと踏ん張らんか!!!こののび太に恥をかかす気か!!
も、申し訳ありません!!
ですが敵は多勢・・・もう第一防衛ラインは限界であります!!
次に大きな振動が来たらもう・・・
いかん!いかんぞ!大腸にも蠕動運動をやめるように指示を出さんか!
もう遅すぎます!!敵はすぐそこまで・・・きゃああああ!!!
アナル隊長!どうした!どうしたのだ!!
だ、大脳どの・・・
どうした?小脳!
我々首脳部が混乱すると現場にもそれが伝わります。
まずは落ち着いて素数でも数えようではありませんか・・・!
そ、そうであるな!
ワシとしたことが・・・1、2、3、5、7、11・・・
「あのう・・・だいじょうぶですか?」
いきなり黙り込み挙動不審の塊になったオレに
彼女は切れ長の目を細め、心配そうに覗きこんでくる。
くっ!!可愛いよう!!!しかし、なんと言えばいい?
ボク運子漏らしそうなの・・・なんて言えないよ?
・・・そうか!比喩表現だ!
この窮状すら詩的に表現すればどうだ?
きゃーすてき!抱いてー!みたいな展開もあるやもしれぬ!
・・・そう例えば
貴女の中にもある想いが、いま私の中で大暴れしてる。
ここでお見せしてもかまわないだろうか?
私の熱い想いを。
・・・落ち着けオレのドンファン!!かっこ良く言い回しを変えても
結局、うんこ漏らしそうってことじゃないか!
そんな奴を愛してくれるヤツなんて世界中のどこにもいないぞ!
迷った末に、あ、あはは、ちょっとバスに酔っちゃったかも・・・と
震えながら言葉を選ぶ可哀想なオレ。
でも、もっとこの可愛いチベタンとお話ししたい・・・
オレ、もう少しがんばってみよ・・・ううっ!!
許しませぬぞ、許しませんぞ・・・それどころではござらんのですぞ・・・
許しませぬぞ、許しませんぞ・・・きゃあああ!!!
ア、アナル隊長、少し自重せんか!!!
だいたい、貴様がもっと優秀であればこんなことにはなっていないのだ!
なんで
オマエはそんなにユルユルなんだ!!顔がどんどん青ざめているであろうにオレを心配して
彼女はカバンの中から毒々しい色の錠剤を取り出してくる。
「だいじょうぶですか・・・?わたし、酔い止め持ってるんです。」
「もしよければ・・・使ってください。」
うん、わかった、結婚してくれ!・・・いや、そうじゃない。
い、いいんですか・・・?とつぶやくオレ。
実は運子に行きたいだけなんで、
そんなのいらないんですと真実を告げる勇気などオレにはない!
だって、仕方ないよ・・・仕方ないよね・・・?
オレはそのクスリをありがたく頂戴する。
「もう少しで、休憩所に入ると思うんです。」
「もしツライようでしたら、運転手さんにバス停めるように言ってきますよ?」
くうううううううう!!!!
なんでこんなにカワイイんだよ!!
オレみたいなクソ漏らし寸前で、ギリギリ崖の上を行くように
ふらふらしたって・・・いかん!また気が遠くなっていた。
気を取り戻したオレは
それには及びません・・・。失礼ですが、少し寝かせていただいても?
と精一杯紳士的に振る舞いつつ体調を整えることにした。
心配そうな瞳に見つめられながら、オレは寝たふりをする。
うう、もったいない・・・あふぅ・・・!?また波が!!
己(おのれ)との孤独な戦いは続いた。
気がつけば「彼女の着きましたよ?」の声が聞こえる。
まさか、気絶していたのか・・・?
もしやすでにアナル隊長は突破され、
オレの座席やズボンが惨状になっているということはなかろうな?
しかし、確かめるまでもなく、
アナル隊長が分際をわきまえず、限界だよう限界だようと喚いているので
まだその最悪の事態には至っていないことはわかった。
オレはふらりと幽鬼のように立ち上がり、バスを降りトイレを探す。ああああああああ!!!!!
どこだ!トイレはどこだ!?
キョロキョロするオレを見て、
インド人の売り子が「水いらんかね?」と近づくが
いらん!!!トイレはどこだあああああ!!!!!
たまらず日本語で叫ぶオレ。
そのあまりの迫力に驚いた売り子は、無言でレストランの後ろを指差した切羽詰まれば日本語でも通じるものだな。
オレは生まれたての子鹿のような足取りで走り、工事現場にあるような簡易トイレにたどり着いた。
ああ!助かった!とドアを開けると・・・
ああ・・・そこは地獄であった。《Its soaking with poo but theres no one here except flies.》
ドアを開けた瞬間、万単位のハエが
まるで意思を持つ一匹のケモノのようにオレに襲いかかる。
そして、トイレの中にはこんもりと盛りがった巨大な黒いブツ。
その上には数多の白いウジがうじゃうじゃと蠢いている。
その凄惨な光景を一目見たその瞬間から
オレはもうチョコレートアイスにパラパラしたやつをトッピング出来ない
不憫な体になってしまった。
そしてなにより、あまりの悪臭に目を開けていられない。
こ、こんなとこで、できるかああああああ!!!
オレはこの糞便地獄に見切りをつけ逃げるように裏に広がる畑に駆けつけるや、ズボンをおろし-以下略-
ようやく一息を着いたオレは新たな問題へ直面した。
おしり、どうしよう・・・
一難去ってまた一難である。思わず持ってきたサイドバックの中にはポケットティッシュのような洒落たものはなく小物が少しと、ダライ・ラマの本しか入っていなかった。
オレは右手にあるダライ・ラマの本と左手を見つめ心の中で叫んだ。神よ!あなたは残酷だ!!!
聖人ダライ・ラマか、かわいい自分。どちらかを傷つけれなければならないというのか・・・
オレは長い昇順の末、静かに自分が選んだプライドを守ることにした。俺は正しいプライドを取ることが出来たよ。
いつか誰かに聞かれた時、そう誇らしく言いたい。
笑いが止まりませんでしたw
by Manami (2016-10-29 20:02)