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23日目!前編 火葬場にて -バラナシ- [インド旅行記-バラナシ-]

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《薪置き場、ここに火が付いたら大惨事である》


バラナシといえば火葬場である。
川岸に薪を積み上げ、人を焼いているらしい。

しずかちゃんを見舞いに行くと、すでに行ったことがあるらしい。

そこは一応、入場フリーの場所ではあるが、
トラブルが絶えない場所でもあるそうだ。

しずかちゃんもウキウキと行ってみたが火葬場に着くやいなや
「なにやってんだ!!」とインド人にいきなり怒鳴られたそうだ。

同行した友人が「何か問題でも?」と少し言い返すと
「うるせえ、てめぇ!ぶっ殺すぞ!」とあっという間に殺伐とした展開になる。

そして、それに加勢するかのようにインド人達が集まってきて、周りを取り囲む。

これは殺される・・・命の危険を感じた彼らは囲みを振り払い、一目散に逃げ出したそうだ。


結局、何が原因で絡まれたのかすらわからない・・・というのが怖いではないか。

インド生活は20日を超えたが
実はそんなに修羅場を体験していないオレはビビりまくりである。


しかしオレは心配などしていなかった。

だって、ぼくにはしずかちゃんがいるもんね。

守ってくださいよ!このオレを!

じゃあさ、今から行こうか。そこ。と
不安を振り払うように笑顔で言ったのだが

「はぁ?あんた一人で行って来なさいよ!」
と超つれない返事が帰ってきた。

な、なんと!オレはそんなところに一人で行くなど
絶対イヤであったので、あの手この手でなだめすかすのだが
まったく、色よい返事がもらえない。

こんな難しい交渉は原子力施設の案件以来だ。

そして「いやなの!もうあんな目に会いたくない!」と叫びフトンに入る
しずかちゃんを見てこの交渉の失敗を確信したのである。

チッ!本当どエスは打たれ弱いぜ。



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火葬場が遠く見える場所でオレは佇んでいた。

iPodという耳栓を付け、話しかけてくるインド人達を完全シャットアウトし、じっと火葬場を観察する。
 
そして、トラブったであろう方々に何かありましたか?と心配そうに聞いてみる。

すると皆、興奮冷めやらぬ感じで話してくる。

そう、いやな事があったら他人に話したくなるもんです。

一昨日のオレみたいにね。


被害者の皆さんに話を聞くと

①いきなり怒鳴られて金を出せと言われた。
その場を去ろうとしたら囲まれ、強引に出ようとしたら暴力を振るうのか!と怒鳴られ、
100ルピーで逃げてきた。(しずかちゃんの事例酷似)

②外国人はここだ!と近くの建物に連れ込まれ、
閉じ込められ薪代を出せと言われた。500ルピーで逃げてきた。

③見ていると、タダだからと火葬場の解説をしてきた。
囲まれて結局300ルピーを請求された。

うーん・・・たった30分でこんなに被害が出ますか。


えーと、時給換算すると900ルピー×1.5円×2=2700円

おいおい、オレの前の仕事より時給いいじゃん!!!


オレも仲間に入れてもらおうかな・・・



しかし、つくづくこれはハードモードである。

一人では絶対に勝てそうにない。

被害者の会からは「絶対行かないほうがいいですよ!」
ありがたいアドバイスを頂く。

でも、見たい。死体。見たい。


しかし、よくよく見ると全員がトラブっているわけではない。

アジア人や女性連れなど、あまり強そうに見えない羊たちが被害にあっているのだ。

つまり、日本人でひ弱そうな俺が一人行くとカモられること間違いなしだ。

 
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《思考を放棄したものに未来はない。》


『敵を知り己を知れば100戦危うからず』
という。

そして『人間は考える葦』でもある。

そうだ、考えろ!考えるんだ!

被害者の皆さんのためにも
オレは被害にあう訳にはいかないのだ。

オレは深く深く沈殿する澱のように思考した。


・・・弱そうなら襲われる。
逆に考えると強そうなヤツは襲われない?

例えば屈強な西洋人の中に入れば---それだ!!


妙案なり!とまわりを見渡すと一人の西洋人が火葬場にむかって歩いている。
その姿、まさに威風堂々である。

こんなところでチンケな策を練るオレとは大違いだ。

いやもうまさに、このお方しかおらんわい!


こんにちわ!と元気よく声をかけ、
その長身の西洋人に同行をお願いすると快諾された。

スウェーデン人でエリックと名乗った彼は
「うちの国じゃ土葬だからね。」と火葬には興味津々だ。

そして焼き場に着くやいなや、インド人の群れを押しのけ、
一番前に陣取るその男っぷりに惚れそうになる。


その最前列から見下ろすと、
岸辺にはキャンプファイヤーの土台のようなものがいくつかある。

その上にミイラのように布に巻かれた死体を置き、焼き人が火をつける。

バチバチッと薪の爆ぜる音がする。

十分ほどたつと布は焼け焦げ、
炎の勢いに中から黒くなった死体が起き上がるように姿をあらわす。

焼き人がモッコのようなもので火の中に死体を押し戻すと、ぽろりと腕がとれる。

犬がそれを目ざとく見つけ、咥えて食べはじめる。



エリックはOh・・・Oh・・・と 
ひとつひとつのシーンにカルチャーショックを受け興奮を隠しきれずにいた。


オレはというと言葉を発せず、じっとただそれを見つめていた。

インド人の死生観はわからない。
でもここでは、食べたり、食べられたり、灰になったり、川に流されたり、
いろんな過程を経て、そしていつか土になっていく。

見えない、いや見ようとしないだけで
それはどこでも同じだ。

そんな精神で、犬がくわえる人の腕を見ても
何故かグロいとかそういった気持ちにはならず、妙に悟った気持ちになる。

頭のなかではhideの遺作『Hurry Go Round』がクルクルと流れていた。
なにか、逆らえないものを見せつけるような
優しくて、遠慮のない、輪廻を綴った歌詞がこの風景と共に、オレの心を締めつけ続けた。


*脚注
火葬場で貧乏だから薪が足らないと、
薪代を請求されることはよくあるそうですが、
こうやってガンジスまで来て、薪で焼いてもらう人は基本的に金持ちさんです。
お金がない人は別の場所にある電気炉で焼いてもらえます。
薪よりはるかに安い値段で。

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《薪は高級品です》




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